水上先生




一般財団法人国際健康医療研究所理事長
医学博士・米国公衆衛生学博士 水上 治


自然に還るとは

人間は自然の中に生まれ、自然から食物など恵みを得、他の生命体と仲良くし、最後は自然に還っていきます。人間は自然という生態系の中で生きてきた自然物です。しかし近代人は、何世紀にもわたって、自然から距離を置き、自然を破壊し利用して、文明を発展させてきました。その結果、今や世界の陸地の75%がひどく改変され、湿地の85%以上が消失し、種の絶滅速度が増しています。人間の仕打ちに、自然はもう悲鳴を上げています。


ウイルスは遺伝子そのものなので、生命体に寄生してのみ生存可能です。近年のウイルス感染症は、自然破壊によって野生動物との接触を加速したことが原因です。今回のコロナ禍も、自然を侮ったための自然からの逆襲です。自然の一部として、人間はもっと謙虚になるべきです。


医聖と呼ばれる2500年前のギリシアのヒポクラテスは、薬草による自然医療を行っていました。以来薬物が発明される100年ほど前まで、ヨーロッパの医療は薬草使用が中心でした。わが国でも同様で、人体と言う自然物を自然界の一部として捉え、自然から離れると病気になる、自然に調和させることが健康の秘訣であると信じていました。昔は、風邪には生姜湯を飲まされたり、リンゴをすって食べさせてもらったり、たっぷり母に甘えられる(?)のが何よりの薬でした。今もヨーロッパの病院では、風邪には薬は処方されません。


自然の中に癒しの源が無数に存在します。それはドクダミだったり、伝統食だったり、森林浴だったり、温泉浴だったり、座禅かもしれません。そうです、自然と言う癒しシステムに育まれて、人間は生き抜いてきたのです。私は半世紀どうしたらより健康になれるか研究し、そうだ、人間が自然に還ることが必須であると気づきました。自然から離れるほど病気になり、自然にどっぷりつかるほど健康になれます。


より健康になりたいのなら、今自分が自然に還るのはどういうことなのか、空を見、緑を見、星を見ながら、少しずつ実践することをお勧めします。必ず、より健康になれます。