水上先生



一般財団法人国際健康医療研究所理事長
医学博士・米国公衆衛生学博士 水上 治



医療の「不要不急」とは?


コロナ禍で、病院は件並外来患者が減って、8割が赤字に転落しました。

もともと病院経営はギリギリで、今年は全ての病院が赤字でしょう。診療所も相当苦しいです。医療の「不要不急」について、考えさせられます。


欧米の病院を訪れても、日本のような混雑は見たことがありません。

欧米に比べると、日本の患者の年間病院受診回数は月1回以上で、約2倍です。有名病院では今も3時間待ちの3分診療と揶揄されます。

欧米では、生活習慣病は全て予約診療で、あまり待たされずに、30分や60分ゆっくりと医師と相談できます。医師だって、3分診療は不本意なのです。


欧米では、使い慣れた降圧剤などは、基本的に3か月程度の長期の薬の処方箋を出します。

何かあったらすぐ連絡する、夜や週末などはER(緊急室)を受診する、と言う習慣が徹底されていますから、患者側に不満はありません。

日本の病院は、昔は生活習慣病でも2週間、今でも大抵4週間の薬の処方ですから、よけい外来が混むのです。再診料が安いので、数をこなさなくてはならない保険点数上の問題もあります。

長期処方したり、生活習慣の指導をしたら、きちんと収入が入るようにしたらいいと、私は考えます。


OTCとは、オーバー・ザ・カウンター、すなわち、薬局で薬剤師に相談して、医師の処方箋なしに気軽に買える薬のことです。

痛み止めや抗アレルギー薬、風邪薬などちょっとした病気には、これで十分間に合わせることが出来ます。これをセルフ・メディケーションといいます。


今回のコロナ禍で、セルフ・メディケーションでしのいだ人も多数いることでしょう。

実は薬学部が6年制になったのは、政府の医療費抑制策の一つとして、セルフ・メディケーションを盛んにしようと言う作戦のためです。

薬剤師が患者のセルフ・メディケーションをサポートできるように、それまでより更に2年教育を伸ばしたのです。

薬剤師が丁寧に相談に応じるので、まごまごしていると、病院や医院は倒産します。


これからは、セルフ・メディケーションの時代です。大きな病気が医療を必要とするのは間違いありませんが、自分で判断できる、軽い病気なら、まずセルフ・メディケーションで様子を見ていいし、それも医療費抑制に役に立ちます。

医師任せではなく、自分の健康は自分で守る時代に突入しました。


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水上先生の「この危機を無駄にするな!」シリーズは以下からもご覧いただけます。

この危機を無駄にするな!1


この危機を無駄にするな!2


この危機を無駄にするな!3


この危機を無駄にするな!4