水上先生

一般財団法人国際健康医療研究所理事長
医学博士・米国公衆衛生学博士
水上 治

2 いのちの最小単位――細胞
その発生と受難、そして死 

2)いのちの最小単位――細胞はあまりに複雑で美しい
細胞がいのちの最小単位です。人体は37兆個ほどの細胞からできています。これは想像を絶する数で、世界人口ですら77億です。細胞1個は1mmの1/100程度の大きさ(細胞によって違う)ですから、もし全細胞をつなげたら、その37兆倍、37万kmに達します。すなわち地球8周分になりますから、我々が一生かかっても歩けないであろう距離です。細胞膜を集めたら、900m四方の面積になります。

顕微鏡で見ると、細胞は実に美しいのです。1個の細胞には、細胞膜(細胞を包む膜)・細胞質(細胞膜の中の核以外の半透明な液体で、様々な代謝を行っている)・核(遺伝情報が詰まっている)・ミトコンドリア(エネルギーを生み出す)・小胞体(遺伝子の命令に沿ってタンパク質を合成する)・ゴルジ装置(小胞体で造られたタンパク質に糖を付加し、安定させて必要な場所に送り届ける)・リソソーム(不要になったタンパク質などを分解する)・エンドソーム(タンパク質を輸送する)・ペルオキシソーム(活性酸素を分解する)などが存在します。一つでも欠けると死が待っています。

細胞を電子顕微鏡で数百万倍に拡大しても、実態の解明にはほど遠いのです。なぜなら細胞は、標本を創った瞬間に死んでしまうからです。スルメを見ても、生きているイカのほんのちょっとのことしかわかりません。

しかも全身の細胞が決して喧嘩せず、見事な調和を保ちながら、精密にネットワークを組んで、一瞬一瞬いのちの維持に働いています。
この事実だけでも、奇跡的だと思いませんか。

私はそこに調和と愛を見ます。